遺伝子発現変化を少数細胞から RNA 発現解析する手法 SC3-seq法を開発
単一細胞での定量トランスクリプトーム解析は、発生学、幹細胞およびガン研究を行うための重要なツールですが、この単一細胞による解析を行うためには、単一細胞中のmRNAを逆転写して製造するcDNAを増幅する必要があり、この増幅法として、PCRによる増幅法と、T7 RNAポリメラーゼによる増幅法の二つの方法が存在しています。また、cDNAの定量的な増幅を、網羅的に解析する方法として、例えば、長い第一のcDNAを合成し増幅産物をRNAシークエンス(RNA-seq)により分析する方法が従来から存在しています。
このような従来からのRNA-seq法は、PCR増幅を伴う例が多いがPCRは増幅率が100%ではないため、特に少数コピーから増幅された場合には増幅後のコピー数の再現性が悪いという問題点がありました。また単一細胞由来のcDNAを解析するには多数のサンプルを解析する必要があり、既存の方法では一細胞あたりの解析単価が高いため、多くの細胞を解析することが難しいという問題点もありました。
本発明は、次世代シーケンサーに適した手法として、単一細胞RNAからcDNAの3プライム末端のみを合成、増幅、読み取りを行うという、単一細胞RNA-seq法、略称としてSC3-seq法(single-cell mRNA 3-prime end sequencing)を新たに提供するものです。具体的には、mRNAのポリAテール配列を利用してcDNAを増幅し、更にフラグメンテーションした後、プライマー配列を選択的に結合して、cDNAの3'末端のみを含むサンプルを取得する工程を伴うものです(下図)。
当該方法により、単一細胞における遺伝子発現の高度に定量的、並列的、且つ費用対効果の高い測定を実現し、特に費用対効果の観点では、比較的浅いシーケンスリード深度で単一細胞cDNAをより正確に定量でき、より広範囲のより実用的な実験設定で多数の単一細胞を高度に並行して解析を可能とするものです。
(左図)cDNAの合成と増幅、および、(右図)ライブラリーの構築
最初のステップ(左)では、CDNAの3プライム末端と5プライム末端にそれぞれV1(緑)タグとV3タグ(灰色)が追加されます。2番目のステップ(右)では、SOLiDシーケンシング用のタグ(P1タグ、水色;P2タグ、紺色;内部アダプター、赤;多重化用インデックス、黄色)を図のように順番に追加しました。cDNAの3プライム末端は、内部アダプター拡張ステップでキャプチャされます。
開発段階 | ・ヒト試料を用いたin vitro実験により効果確認 |
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発表状況 | Nucleic Acids Res. 2015 May 19;43(9):e60. Doi:10.1093/nar/gkv134 |
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