疾患iPS細胞を利用したスクリーニングにより中條・西村症候群治療薬候補としてヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を見出しました。
中條・西村症候群(NNS)は、PSMB8遺伝子の変異によりプロテアソームの機能不全が起こる遺伝性疾患であり、日本全国でも患者は10数人という超希少疾患(難病)です。治療法としてはステロイド内服が行われていますが、脂肪萎縮や関節拘縮には効果がなく、特に乳幼児に対する副作用も重篤なことから、新規治療薬の開発が切望されています。
NNS患者から樹立したiPS細胞を単球の表現型を持つ細胞へと分化させ、TNF-α及びIFN-γで刺激し、誘導されるサイトカインやケモカインの産生量を比較したところ、NNS患者で過剰産生される炎症性ケモカインmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)及びinterferon γ-induced protein-10(IP-10)の産生が増加していることが確認されました。
MCP-1及びIP-10の産生抑制を指標に、5,821個の化合物ライブラリーを対象に複数回のハイスル―プットスクリーニングを行い、最終的に4化合物が残りましたが、うち3化合物(CUDC-907、JNJ-26481585、LAQ824)はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤でした。これにHDAC阻害剤であるロミデプシン及びトリコスタチンAを合わせて、MCP-1及びIP-10の産生阻害効果を検討しました。いずれの化合物も濃度依存的に炎症性ケモカインの産生阻害効果が見られました(下図参照)
HDAC阻害剤がNNS疾患モデル細胞におけるMCP-1及びIP-10の過剰産生を抑制し、健常レベルまで低下させることを明らかにしました。
開発段階 | 細胞レベル(in vitro)で効果を確認済み。 |
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発表状況 | Stem Cells Translational Medicine 10, 455–464 (2021) doi:10.1002/sctm.20-0198 |
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