細胞の画像に基づいて、がんを特徴づける遺伝子変異を定量的に評価することができる技術です。
がんは遺伝子変異によって生じますが、同じ遺伝情報を持つ細胞であっても、形や大きさ、成長速度、遺伝子発現などの“表現型”の違いによって進行の仕方は大きく異なるため、近年、マルチオミクス解析やメカノバイオロジーが注目されています。
一方、従来の細胞・オルガノイド評価は、固定・染色した細胞を顕微鏡で観察する手法が中心でした。こうした中で、「生きた細胞やオルガノイドの動態を定量指標を用いて表し、疾患の評価に発展させること」は、先進医療や個別化医療において重要な意義を持つとされています。
発明者らは、患者由来の大腸がんオルガノイド培養をタイムラプス撮影し、細胞分裂時の細胞の変形の様子を解析した結果、がん関連遺伝子の変異の有無によって、変形量が異なることを見出しました(図1)。さらに、この細胞集団の変形の数理モデルから力学特性を計算し、遺伝子変異を定量的に評価する方法を開発しました(図2)。本発明により、薬剤による動的表現型の変化を定量的に検出することができており(図3)、予後不良遺伝子変異の早期検出や、阻害剤や放射線などの用量・照射時間依存的な応答の数値化へも応用可能性がある技術です。
⮚生きたままの細胞を非侵襲的に評価可能
染色などがいらない非侵襲な手法のため、オルガノイドの培養と並行して適用可能です。
⮚細胞培養時の画像情報のみで解析
タイムラプス撮影等で得られた画像情報から力学特性等を数値化することで、分子レベルの変調を定量的に評価することが可能です。
⮚薬効評価・個別化医療への応用可能性
生細胞への薬剤添加評価で、遺伝子発現量との相関を確認済みです。

図1. 生細胞における遺伝子変異の有無による細胞分裂開始時から形状回復までの変形量
遺伝子変異がある群は、細胞の変形から回復までにより長い時間を要することがわかった。

図2. 遺伝子変異の有無による弾性率及び粘性率の差異の評価
本発明を用いて生細胞を解析し、粘弾性を評価したところ、遺伝子変異がある群では弾性率が低く、粘性率が高い結果が得られた。
** p< 0.01 *** p< 0.001

図3. 薬剤による介入効果の定量評価
図2と同じ細胞(遺伝子変異あり)へ薬剤を添加し、(a)当該遺伝子の発現量及び(b)細胞の弾性と(c)粘性を評価した。結果として、薬剤添加によって、細胞の弾性は向上し、粘性は低下しており、これは、図2(薬剤添加なし)の場合と比較して、薬剤の効果があったことを示す。また、この薬効に伴い関連遺伝子の発現量の増加も確認された。
| 開発段階 | 論文:bioRxiv preprimt doi: https://doi.org/10.64898/2026.03.07.710277 |
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| 希望の連携 | ・特許実施許諾 ・オプション ・共同研究 ※本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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