斜面や渓流ごとの土地環境や履歴の違いを考慮でき、見逃しと空振りの軽減化が期待できる土砂災害予測システムです。
降雨により発生する土砂災害を軽減するためには、斜面崩壊や土石流の的確な発生予測が必要です。しかし現在の予測方法は、全国一律の雨量指標および各メッシュ一律の危険基準線(CL)に基づいており、地点ごとの土地環境(地形、地質、植生等)や履歴(性状変化の有無や時期)を考慮していません。このため見逃しと空振りを同時に少なくすることが難しく、改善が望まれていました。
発明者らは、各種雨量指標 を 様々に組合せ種々の見方で降雨の特徴を分析した上で、その結果を「未経験降雨指数」という新たな指数で表現する、独自の土砂災害予測システムを開発しました。未経験降雨指数は、「ここまで遡れば、いずれの雨量指標の組合せについても、現在時刻 の雨量 を上回る雨が出現する時刻」と定義します。未経験降雨指数の利点として,以下の 可能性 が期待できます。
地点ごとの土地環境や履歴の違いを考慮した予測により見逃しと空振りを軽減
降雨データの蓄積に伴う見直し作業が不要で、常に最新の降雨記録に基づいた危険度判定を実施
過去に災害を引き起こした豪雨との比較により、避難の根拠を明確化
過去の記録的豪雨を上回る規模になることを直接伝えることにより、避難行動の妨げとなる正常性バイアスを軽減
図1. 2020 年 7 月豪雨における芦北町 熊本 の未経験降雨指数の時間変化
未経験降雨指数を当該豪雨にて算定した結果を示す。この指数を用いることで、観測を開始して以来、経験したことのない降雨規模になった時間帯に、土砂災害が発生していたことが分かる。未経験降雨指数を既往災害の日時と比べることにより、避難行動を起こす必要性を強くアピールできる と期待しうる。
開発段階 | 実際の災害事例を用いた解析により 、 適切で分かりやすい土砂災害予測を実施できる可能性を示した(図1)。 |
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希望の連携 | ・実施許諾契約 ・共同研究によるシステム構築 ・ 実証と当該期間の特許予約権付与(オプション契約) ※本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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