3次元的な分子の動きと電荷分布を考慮した、高精度かつ高効率な化合物−タンパク質間相互作用の評価を実現しました。
生体高分子の分子間相互作用の評価は、生命現象の理解や医薬品開発を進める上での基盤となります。例えば医薬品開発においては、標的タンパク質と化合物との膨大な数の分子間相互作用を評価する必要があります。従来の相互作用評価の大部分は、時間的・経済的コストが高い実験的手法や高精度計算手法に依存していました。このため、効率的かつ低コストに分子間相互作用を評価する手法の確立は重要な課題です。
①AIを応用した量子化学計算による多分子系の相互作用エネルギー予測の高速化
従来の量子化学計算(QM)は、標的タンパク質とリガンドの結合の安定性を高精度 に評価できるものの、計算コストが高い問題点があります。これまで、AI技術をQM に応用する(QM-AI)ことで、単体の小さな分子に対しては、QMを行ったかのよう な結果を得ながら、 QMに比べて計算時間を短縮できていました。本発明では、QM-AIを多分子系に応用することに成功しました。
➢ QMと同様の精度で多分子系タンパク-リガンド間相互作用エネルギー予測に成功
➢ 1構造あたり約5秒という短い計算時間で予測可能
従来のQMでは1構造あたり6~30時間を要するところ短時間計算が可能です。
➢ 分子の動的挙動に対応させた技術と融合すれば、超低計算コスト化も可能
②短時間分子動力学シミュレーションによる化合物−タンパク質間相互作用の予測
本予測方法では、短時間の分子動力学(MD)シミュレーションを用いて化合物とタ ンパク質の相互作用を捉え、高精度・高効率でのスクリーニングを可能にします。
➢ ドッキングポーズの正誤と結合安定性を評価
➢ 従来のドッキングシミュレーション単体より、ポーズの予測精度が向上
➢ 従来のMDシミュレーション単体より、1000倍以上の高速化に成功
開発段階 | ・QM-AIを用いて高効率にQMと同様の高精度での分子間相互作用エネルギー予測が可能なことを示した。 ・短時間MDシミュレーションを用いて、スクリーニング規模のデータ量(計48710ペア)で高精度な活性評価を行った。 |
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希望の連携 | • 特許実施許諾契約 • オプション契約 (技術検討のためのF/S) |
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