発明情報

小腸様組織の構築方法

マイクロ流体デバイスを用いて間質流を再現することで、小腸の多層構造を再現した小腸組織(マイクロ小腸システム)をヒト多能性幹細胞から構築することに成功しました。

背景

ヒト多能性幹細胞から小腸への分化誘導において、様々な増殖因子の組合せが検討され、成熟化が試みられてきました。しかしながら、依然として小腸の複雑な多層構造及び機能を再現することは困難でした。

発明概要と利点

小腸を構成する細胞は間質流(血管から滲み出した血漿成分が間質液となって形成する体液の緩やかな流れ)に曝されています。本発明者らは、間質流が小腸発生に重要な刺激ではないかと考え、発生過程での間質流をin vitroで模倣することで、ヒトiPS/ES細胞から小腸モデルの構築を試みました。その結果、マイクロ流体デバイスを用いて間質流を再現し、多層構造の小腸組織を形成するプロトコールを開発しました。

[8120]fig.png

得られた小腸組織には、絨毛様に隆起した三次元構造を有する上皮層があり、その下層には間質層が整列し、多層構造を形成していました。このように形態的に成熟した小腸上皮細胞は、静置培養を行った群では観察できませんでした。

開発したマイクロ小腸システムの応用可能性を確認するため、薬物代謝実験及びウイルス感染実験を行いました。小腸で高発現する薬物代謝酵素(CYP3A4)の活性を測定しました。その結果、間質流を作用したマイクロ小腸システムは、高いCYP3A4活性を有することがわかりました(下図左)。また、ヒトコロナウイルスの一種(HCoV-229E)を用いて感染実験を行ったところ、感染受容体を発現する頂端側からウイルスを作用した方が、受容体を発現しない基底側から作用するよりも、HCoV-229Eが効率よく感染しました(下図右)。

[8120]fig2.png

以上の検討により、マイクロ小腸システムは小腸の薬物動態試験や感染症研究に応用可能であることが示唆されました。

開発段階 ヒト多能性幹細胞を用いて作製実証済み。
発表状況 Cell Stem Cell 31, 1315–1326 (2024)
doi:10.1016/j.stem.2024.06.012
希望の連携 ・ 実施許諾契約
・ オプション契約
※本発明は京都大学から特許出願中です。
関連リンク PDFで見る

お探しの情報は見つかりましたか?

  • 興味のある研究がある
  • 必要な情報が見つからない
  • 活用したいが流れがわからない

どんなことでも、まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
トップへ戻る
株式会社TLO京都

〒606-8501
京都市左京区吉田本町
京都大学 国際科学イノベーション棟3階

お問い合わせ