細胞周期の同調(低温ショック及び薬剤)とDNA修復経路の改変(薬剤)を組み合わせることにより、相同組換え修復を利用したゲノム編集の効率を協調的に高められることを見出しました。
CRISPR-Cas9システムはゲノム編集でもっともよく用いられるツールであり、一塩基変化や他のデザインされた改変を作り出すため、相同組換え修復(homology directed repair、HDR)経路がDNA修復鋳型と組合わせて利用されます。しかしながら、直接的な選択ができないため効率と適用性に限度がありました。
本発明者らは、細胞周期のフェーズとDNA修復経路の選択性との関連を鑑み、培養条件と化学的阻害剤の効果を検討しました。その結果、温和な低温ショック(32℃、48hr)によりHDRの選択性(HDR/MutEJ比)が増し、CDC7阻害剤XL413の併用によりさらに選択性が増すことが判明しました(下図左)。
続いてDNA修復経路の特定の構成要素を阻害すると報告されている様々な低分子化合物を試験し、NU7441(DNA-PK阻害剤)及びSCR7(DNAリガーゼIV阻害剤)にHDR頻度を高める効果があり、これら二つを組み合わせるとさらに効果が増すことが分かりました。さらに細胞周期の同期とDNA修復経路の改変を組み合わせたところ、特に低温ショックなしの条件で合算的な効果が見られました(下図右)。
本手法を用いてホモ接合性GFPレポーターiPS細胞株のbiallelicな遺伝子編集を行ったところ、高いターゲッティング効率で一塩基修飾を含むホモ接合性変異株が得られました。続いて、2種類のsingle-stranded donor oligonucleotideを用いることにより、ヘテロ接合性の変異株も得られることを確認しました。
これらの結果により、本発明のアプローチは、ヒトiPS細胞の内因性遺伝子座においてホモ接合クローンとヘテロ接合クローンとの両方を産生するのに非常に有効であることが裏付けられました。
開発段階 | ヒトiPS細胞のゲノム編集で効果を実証済み。 |
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発表状況 | Nature Communications 11, 2876 (2020) doi:10.1038/s41467-020-16643-5 |
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