多発性嚢胞腎患者由来iPS細胞の利用により、多発性嚢胞腎の早期検出、予防・治療薬のスクリーニングに資するマーカー遺伝子群を同定しました。
常染色体顕性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)は、PKD1/PKD2遺伝子の変異を原因する遺伝性疾患であり、腎臓に嚢胞が多数発生し腎臓機能が徐々に低下していきます。多発性嚢胞腎を早期に検出する方法が所望されていました。
本発明者らは、多発性嚢胞腎患者よりiPS細胞を作製し、血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞へと分化させました。得られた血管内皮細胞あるいは血管平滑筋細胞から抽出したRNAを用いて、マイクロアレイにより、対照と比較して発現量に優位に2倍以上差がある遺伝子群(発現が2倍多いあるいは少ない)を同定しました。
被験者におけるこれらの遺伝子の発現上昇/下降の有無又はその程度を測定することにより、それを指標として被験者が多発性嚢胞腎を発症している又は発症するリスクを有しているか否かを検査することができます。すなわち、被験者由来の試料から、本発明で見出した一つかそれ以上の遺伝子の発現量を測定し、2倍多い遺伝子(群)に関しては対照試料における遺伝子発現量と比較して高い場合、2倍少ない遺伝子(群)に関しては対象と比べて減少している場合、当該被験者が多発性嚢胞腎を発症している、又は発症するリスクを有していると判定します。
さらに、これらの遺伝子の発現レベルを指標として用いることにより、多発性嚢胞腎の治療剤/予防剤をスクリーニング・同定することができます。候補物質を、多発性嚢胞腎患者由来のiPS細胞から分化誘導した血管内皮細胞又は血管平滑筋細胞と接触させ、本発明の遺伝子(群)の発現量もしくは転写活性を測定し、候補物質と接触させなかった場合と比較して、2倍多い遺伝子(群)に関しては発現量もしくは転写活性が減少していた場合、2倍少ない遺伝子(群)に関しては増加していた場合、当該物質を多発性嚢胞腎の治療剤/予防剤候補として選別します。
本発明の方法により、多発性嚢胞腎を検査すること、及び該疾患の予防もしくは治療に有用な薬物をスクリーニングすることができるようになります。
開発段階 | 患者由来iPS細胞を用いて同定 |
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発明者 | Scientific Reports 2016 Jul 15:6:30013. doi: 10.1038/srep30013 |
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