TRA-1-60よりもさらに早い時期に発現するマーカー遺伝子を同定し、当該マーカー遺伝子の発現を指標としてiPSCを効率的に得ることに成功しました。
ヒト体細胞にリプログラミング因子(OCT3/4, SOX2, KLF4, c-MYC:OSKM)を導入した後のiPS細胞の樹立可否、即ち初期化の成功有無を確認する際に、当該初期化の成功により得られる多能性マーカーの一つとして従来からTRA-1-60というヒトiPSC特異的表面抗原が用いられて来ましたが、当該マーカーは成熟期に向かう多能性幹細胞集団に至適化されたマーカーであるため、初期化段階の最も初期に起こる細胞の性質変化を捉えることが出来ないという問題点がありました。
本発明者らは、5種類のヒト体細胞にOSKMの4因子を導入し、導入前と導入7日後とで、それらの体細胞における遺伝子発現をマイクロアレイを用いて網羅的に解析し、全ての細胞種で5倍以上発現が変動していた遺伝子を抽出しました。抽出された194種の上方制御遺伝子の中に、TRA-1-60遺伝子より早期に発現するリプログラミングマーカー遺伝子があるのではないかと予測し、①体細胞で発現が検出できない②リプログラミング因子導入後3日目の細胞集団で不均一に発現する③導入後7日目の全てのTRA-1-60陽性細胞で発現しているとの条件でスクリーニングしたところ、ヒト内在性レトロウイルスH型駆動性の長鎖非コーディングRNAを産物とするESRG遺伝子を発見しました。ESEG遺伝子はリプログラミングの極めて初期の段階でその発現が活性化され、iPSCでは全ての細胞で均一に発現し、分化後は速やかに発現が消失したことから、初期化段階の最も初期に起こる細胞性質変化をトラックする上で非常に有用なマーカーであることが分かりました。
この結果、多能性マーカーに係る選択肢がさらに広がることとなり、培養期間に応じた細胞の純化方法を選択できるなどの様々なメリットの享受が期待できます。
開発段階 | ヒトiPS細胞で実証済み。 |
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発表状況 | Cell Reports. 2018 Apr 10;23(2):361-375. doi:10.1016/j.celrep.2018.03.057. |
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