体細胞の核初期化工程においてSignal Transducer and Activator for Transcription 1(STAT1)の機能を阻害することにより、iPS細胞の樹立効率を高められることを見出しました。
これまで、p53のノックダウン、TGF-βシグナル伝達経路の阻害、DNAメチルトランスフェラーゼの阻害、p38の阻害など、いくつかの種類の干渉が、iPS細胞の樹立効率を改善することが明らかとなっています。しかしながら、iPS細胞の樹立効率はいまだに十分とは言えませんでした。
本発明者らは、これまで核初期化との関連については知られていなかったSTAT1の機能阻害により、iPS細胞の樹立効率を顕著に増大させ得ることを明らかにしました。 STAT1の機能阻害には、STAT1の化学的阻害物質(siRNA/shRNAあるいはエピガロカテキン)を用いることができ、これらの阻害物質を初期化工程にある細胞に接触させれば効果を発揮できます。
ヒトの皮膚由来線維芽細胞(HDF 1616株)に対して、ヒト由来の4遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)をレトロウイルスで導入し、感染4日目に、あらかじめフィーダー細胞を播いておいたディッシュに播種しました。STAT1阻害剤の作用効果を検討するため、感染5日目から24日目までエピガロカテキン(EGC)のDMSO溶液をEGC濃度が10μMとなるように添加した培地中で細胞を培養し、DMSOのみを添加した場合と樹立効率の比較検討を行いました。感染24日目(4遺伝子の導入から24日目)にiPS細胞コロニー数を測定した結果、4遺伝子の導入において、EGCを添加することで、DMSO(対照)群と比較して有意にヒトiPS細胞コロニー数が増大することが確認されました(下図参照)。またsiRNAによりSTAT1を阻害しても、同様の効果が見みられることを確認しています。
開発段階 | ヒトiPS細胞の樹立において効果を実証済み。 |
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