進行性骨化性線維異形成症(FOP)による異所性骨化の予防・治療薬候補として、チプラクスチニン及びガラルジンを見出しました。
FOPは、本来骨形成が起きない組織において骨形成が認められ(異所性骨化)、重篤な障害や致命的な呼吸器不全を生じる遺伝性の難病です。FOPにおける異所性骨化を抑制する薬剤の開発が世界中で行われていますが、現時点ではまだ根本治療薬はありません。
本発明者らは、 FOP患者由来iPS細胞(FOP-iPSC)において、遺伝子修復技術を適用することにより、遺伝的バックグラウンドは同一で突然変異のみが修復されたiPS細胞(resFOP-iPSC)を作製することに成功しました。これらの細胞由来の各種細胞の遺伝子発現プロファイルを比較することにより、いくつかのシグナル伝達経路に分類される遺伝子群について両者間で違いが観察されました。これらのシグナル伝達経路の阻害剤のうち、チプラクスチニン(Tiplaxtinin、PAI1阻害剤)及びガラルジン(GM6001、MMP1阻害剤)によりFOP-iPSC由来神経堤細胞において軟骨組織の過剰形成が抑制されることを見出しました。
Tiplaxtinin及びGM6001は、phase I及びphase I+IIの段階で添加した場合において、FOP-MSCにおける軟骨誘導を減少させました(下図参照)。
FOP患者における異所性骨化は、まず軟骨が形成され、その後骨に置き換わる軟骨内骨化により引き起こされることから、本発明で見出した軟骨形成を抑制する効果のある薬剤は、異所性骨化の治療に有用であると考えられます。
特許情報 |
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希望の連携 | 患者由来iPS細胞を用いてin vitroで評価済み |
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