合成mRNAからの遺伝子発現を人為的に制御できる人工翻訳活性化タンパク質(Caliciviral VPg-based Translational activator, CaVT)の開発に成功しました。
合成mRNAを用いた遺伝子導入ではDNAを用いた場合と異なり、ゲノム挿入による変異の危険を回避することができます。しかしながら、人工遺伝子回路の多くで重要な役割を担っている転写活性化タンパク質による遺伝子発現の活性化が利用できないという問題点もありました。
本発明者らは、合成mRNAからタンパク質への翻訳を直接活性化できる人工翻訳活性化タンパク質CaVTを開発しました。CaVTはモチーフ特異的RNA結合タンパク質と翻訳活性化を担うカリシウイルスのVPgタンパク質の融合たんぱく質であり、5'UTRの標的RNAに結合することで、通常状態では翻訳が低く抑えられている特殊な合成mRNAの翻訳を活性化させることができ、また制御対象となるmRNA側のCaVT結合部位を変えることで、翻訳活性化と翻訳抑制の両方を一種類のCaVTで行うことができます(下図参照)。
CaVTを含む人工遺伝子回路を構築することで、ゲノム編集や細胞死誘導を細胞の内部状態に応じて制御できることを実証しました。
さらに、細胞種によって活性が異なるマイクロRNAを利用して、細胞種特異的な翻訳制御が可能なCaVT、薬物による遺伝子発現調節の可能な薬物応答性CaVTを開発しました。
CaVTによる翻訳制御の対象とする合成mRNAにはどのような遺伝子を載せることもでき、また様々な発現調節システムと組み合わせることもできることから、今後、細胞の分化や初期化の誘導、分化後の細胞の純化といった再生医療・創薬に必要な生命操作技術の発展に寄与するものと期待されます。
開発段階 | 細胞レベル(in vitro)で実証済み。 |
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