成人型シトルリン血症やNASHの病態解析および創薬に使用可能な疾患モデルの作製に成功しました。
ヒトの成人型シトルリン血症を正確に再現する動物モデルは現在存在していません。また、成人型シトルリン血症に対する治療法は、肝移植を除いて食事療法や薬物療法などの対症療法しか存在しませんでした。したがって、同疾患の病態を正確に再現する病態モデルの確立とそれを用いた創薬系の構築が必要とされていました。
発明者らは、成人型シトルリン血症の患者の体細胞から樹立されたiPS細胞から分化誘導して得られた肝細胞に、塩化アンモニウムを添加してアンモニア取り込みや尿素産生を評価することによって、成人型シトルリン血症における尿素サイクル異常を再現することに成功しました。この系を用いることで成人型シトルリン血症などの先天性尿素サイクル異常症の治療薬をスクリーニングまたは評価できることを見出しました。また、先天性尿素サイクル異常症の治療に使用されるアルギニンを投与することによって、これらの異常が改善することを明らかにし、アルギニンが本スクリーニング系のポジティブコントロールとして使用できることを見出しました。
⮚高い精度
本発明により作製される治療薬スクリーニング系によれば尿素サイクル異常と脂質代謝異常の病態を安定して再現することができ、これを用いることで、成人型シトルリン血症をはじめとする先天性尿素サイクル異常症および脂肪肝、NASHに対する治療薬開発を高い精度で行うことができます。
⮚病態の解明
本発明により作製される病態モデルを用いて、上記の疾患の病態解明が行うことができます。また、患者由来iPS細胞株に対してゲノム編集等で変異遺伝子の少なくとも片側を修復した細胞株を作製して比較対象とすることで、ノイズを減らして病態を正確に再現することができ、薬剤の評価の精度も向上します。
図.健常者または成人型シトルリン血症患者由来のiPS細胞から分化誘導された肝細胞において、アンモニア除去能と尿素産性能を評価した結果
開発段階 | ノイズを減らして病態を正確に再現しているため、本発明の実用化に向けた完成度は高い。 |
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希望の連携 | 実施許諾契約 オプション契約 ※本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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