培養条件を最適化することにより、多能性幹細胞よりPDGFRα陽性の中胚葉系細胞を経て、Myf5陽性かつMyoD陽性の骨格筋前駆細胞を製造する方法を見出しました。
筋ジストロフィー等の筋疾患の根治療法として、幹細胞移植が提唱されています。骨格筋前駆細胞のソースとして、多能性幹細胞が有望視されていますが、遺伝子操作なしに多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞への分化を誘導する手法は、これまで知られていませんでした。
本発明者らは、多能性幹細胞を、無血清下かつActivinA、BMP及びIGF-1の存在下で培養することにより、PDGFRα陽性の中胚葉系細胞を得て、さらにこの中胚葉系細胞を無血清下かつLiCl及びIGF-1の存在下で培養することにより、Myf5陽性かつMyoD陽性である骨格筋前駆細胞を製造する方法を見出しました(下図参照)。
上記の方法を用いてマウスiPS細胞より骨格筋前駆細胞を作製し、筋ジストロフィーモデルマウス(DMD-nullマウス)の前脛骨筋に筋肉内注射にて移植し、4週後に組織を解析しました。その結果、iPS細胞由来骨格筋前駆細胞の骨格筋への移植は、少なくとも筋肉内注射局所での炎症を抑制し筋再生を終焉に向けさせることが確認されました。移植されたiPS細胞由来骨格筋前駆細胞は、筋線維のジストロフィンを産生する細胞として生着し、その結果、筋線維にジストロフィンが発現することで筋線維の崩壊が抑制され、骨格筋での炎症が治まり、組織の修復・過再生状態の終焉を促すことが明らかとなりました。
本発明によれば、培地中に添加する成長因子を適宜組み合わせることにより、遺伝子操作を経ずに多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞に分化誘導することができます。得られる骨格筋前駆細胞は、筋肉の炎症抑制及び筋肉組織の修復効果があるので、筋ジストロフィーをはじめとする筋疾患における骨格筋再生医療への応用が期待されます。
開発段階 | マウス及びヒトiPS細胞で実証済み。 |
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発表状況 | PLoS ONE 7, e47078 (2012) doi:10.1371/journal.pone.0047078 |
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