多能性幹細胞からの誘導工程において、培養条件を適宜検討することにより、移植すると軸索を伸長させ脳組織に適合することのできる大脳皮質ニューロンを効率よく作製できることを見出しました。
脳虚血等の傷害脳の治療には外来性の神経細胞を投与する移植治療が検討されています。神経細胞を多量に採取することは困難であるため、多能性幹細胞からの分化誘導が有望視されています。しかしながら、脳組織再生に適した神経細胞を効率よく作製する手法については、改良の余地がありました。
本発明者らは、(i)多能性幹細胞をTGFβ阻害剤(SB431542)、bFGF、Wnt阻害剤(Wnt-C59)、BMP阻害剤(LDN193189)及びROCK阻害剤(Y-27632)を含む培養液中で浮遊培養する工程、(ii)工程(i)で得られた細胞をWnt阻害剤、及びBMP阻害剤を含む培養液中で浮遊培養してスフェアを得る工程、(iii)工程(ii)で得られたスフェアを接着培養して大脳皮質を形成させる工程、を含む多能性幹細胞から大脳皮質ニューロンを製造する方法を見出しました(下図参照)。
上記の方法で48日間誘導した大脳皮質ニューロンを、マウス大脳皮質の運動野に移植し、6か月後に摘出した脳切片をヒトNCAM抗体で免疫染色したところ、移植した細胞に由来する軸索が、中脳、橋、延髄と伸長し皮質脊髄路により、脊髄まで到達していることが確認されました。
本発明で得られる大脳皮質ニューロンは、再生医療、特に脳虚血等の傷害脳の治療に寄与することが期待されます。
開発段階 | ヒトES/iPS細胞で実証済み。 |
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発表状況 | Stem Cells Translational Medicine 5, 552–560 (2016) doi:10.5966/sctm.2015-0261 |
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