多能性幹細胞において、Ngn2(neurogenin 2)及びFezl(FEZ family zinc finger 2)という二つの転写因子を導入・発現させることにより、効率的に上位運動ニューロンを誘導できることを見出しました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、大脳皮質運動野の第5層に存在する上位運動ニューロンと、脊髄に存在する下位運動ニューロンが選択的に変性する神経変性疾患です。これまで、下位運動ニューロンについては、多能性幹細胞から作製できることが報告されていましたが、上位運動ニューロンを分化誘導する方法は知られていませんでした。
本発明者らは、ヒトiPS細胞にNgn2及びFezl遺伝子を導入して発現させると、 3週間後には約80%の細胞が機能的な錐体細胞に分化することを見出しました。そして、当該錐体細胞の約20%の細胞は、大脳皮質第5層及び運動野のマーカー遺伝子を発現し(下図参照)、培養下で下位運動ニューロンに投射してシナプスを形成できること、すなわち、機能的な上位運動ニューロンであることを明らかにしました。
さらに、家族性ALS患者由来iPS細胞から上記方法により製造した上位運動ニューロンは、ALSに特徴的な病的性質(TDP-43タンパク質の細胞内凝集、神経突起の伸展不良等)を自発的に生じることが見出されました。
本発明による上位運動ニューロンモデル、皮質脊髄路モデルの普及により、上位運動ニューロンに対して生存促進や変性阻止作用を発揮し得る薬剤をスクリーニングする手段が提供されることから、ALSを含む上位運動ニューロン疾患の治療方法と治療薬の研究が大幅に加速されることが期待されます。
開発段階 | ヒトiPS細胞で実証済み。 |
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