発明情報

成熟心筋細胞の抽出方法

機能的に成熟した心筋細胞を抽出できる新規な心筋細胞マーカーとしてCORINを見出しました。

背景

心筋細胞を用いた薬剤の毒性試験や心疾患モデル研究を行うためには、生体内の心筋細胞を十分に模した成熟心筋細胞を大量に集める必要があります。心筋細胞には分裂能がなく、生体から抽出することも困難であるため、多能性幹細胞から心筋細胞を分化誘導する研究が多数行われてきました。ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞は一般的に胎児性心筋細胞に類似した未成熟な段階に留まり、イオンチャンネル機能が不十分であると言われています。多能性幹細胞から成熟心筋細胞のみを誘導できる手法は提示されてはおらず、また成熟心筋細胞に特異的なマーカー遺伝子についても報告はなされていませんでした。

発明概要と利点

本発明者らは、ヒトiPS細胞を心筋細胞へと分化させ、分化前後の細胞のシングルセルRNA seq解析を行うことにより、成熟心筋細胞のマーカーとしてCORINをはじめとする15個の遺伝子を同定しました。

CORIN陽性を指標として抽出された心筋細胞について、機能解析を行いました。顕微鏡観察により、形態的にCORIN-High群はCORIN-Low群と比較して大きい細胞サイズを示しました(下図a)。細胞内の心筋サルコメア構造を電子顕微鏡で解析したところ、CORIN-High群はサルコメア構造が明確に配列され、CORIN-Low群と比較してサルコメアの幅も顕著に長くなっていた(下図b)。ミトコンドリア機能を調べるため、酸素消費速度(OCR)を計測したところ、CORIN-High群は高い酸素消費速度を示し、電子伝達系の活性も高いことが分かりました(基礎呼吸、予備呼吸能、プロトンリーク、ATP産生関連呼吸、下図c)。

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これらの結果から、CORINの高発現を指標として、転写レベルだけでなく、構造的にも、電気生理学的にも、代謝的にも、成熟した心筋細胞を濃縮できることが分かりました。本発明によって得られる、より均一に精製された成熟心筋細胞群を用いれば、従来よりも精度の高い薬剤の毒性試験や心疾患モデル研究を行うことができるようになり、薬剤開発期間の短縮や新たな疾患標的の探索に有用です。

開発段階 ヒトiPS細胞由来心筋細胞で実証済み。
特許情報
発明の名称
新規成熟心筋細胞マーカー
出願人
国立大学法人京都大学
登録番号
特許第6780197号
希望の連携 ・ 実施許諾契約
・ オプション契約
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