iPS細胞由来ネフロン前駆細胞の収量を大幅に増やす拡大培養を可能にしました。
近年、in vitro環境で人工的に作製した細胞を損傷部位の細胞と置換するために体内に移植する再生医療製品の開発が進んでいますが、移植の際には大量の数の細胞が必要となるため、当該治療方法の普及のために現実的な費用で再生医療製品を提供するには、培養コスト、培養時間の低減は必然的に解決すべき課題であり、より効率的に細胞を増やすという、移植対象細胞の拡大培養法の開発が望まれています。
また、慢性腎臓病は腎障害の症状や腎機能の低下が慢性的に続く疾患であり、人工透析や腎移植を受けなければ生命の維持が困難になる末期腎不全へと繋がるため、QOL(Quality of Life)の向上のためにも、腎臓の細胞の元となり移植対象細胞である腎前駆細胞(ネフロン前駆細胞)を効率よく増やすことができる拡大培養法の開発が望まれています(10億個オーダーの移植細胞数が必要と見積もられています)。
本発明は、ネフロン前駆細胞を対象に、同細胞を更に増殖・拡大培養するために、特定の因子を含む培地条件を提供するものです。具体的には、TBK1阻害剤、CSF1R阻害剤、FLT3阻害剤、DYRK1阻害剤、及びSTAT6阻害剤の少なくともいずれかを含む培地条件下で培養を行うことを特徴とします。
また、上記培地に対して、更に、FGF2、ヘパリン、ROCK阻害剤、GSK3β阻害剤、白血病因子、ALK阻害剤、BMP阻害剤、BMP7の少なくともいずれかを加えた培地条件下で培養を行うことで更なる拡大培養を実現することを特徴とします。
例えば、TBK1阻害剤の例として、MRT67307及びBX795を使用することが可能です。これら培地条件を経て得られた腎臓オルガノイドは、腎疾患を有する対象に投与して、腎疾患を治療するために使用することが可能です。また、同オルガノイドは、腎疾患を治療又は予防するための医薬組成物としても使用することも可能です。
開発段階 | ・ヒト試料を用いたin vitro実験により効果確認 |
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発表状況 | Biochem Biophys Res Commun. 2021 Jun 18;558:231-238. doi:10.1016/j.bbrc.2020.02.130 |
希望の連携 | ・実施許諾契約 ・オプション契約 ※本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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