造血幹細胞を体外で大量に増幅する培地条件を特定しました
造血幹細胞は、全ての血球に分化可能な細胞であると同時に、生体内において自ら自己複製し、一生涯に亘って血球を供給する細胞です。そのため、白血病、再生不良性貧血など、正常な血液を作ることが困難になった患者においては、患者の造血幹細胞を正常な造血幹細胞に置き換える造血幹細胞移植による治療が劇的な成果をあげてますが、生体における造血幹細胞の増幅メカニズムには不明な点が多く、ドナーから採取した組織中の造血幹細胞を移植に耐えられる形で増幅することが困難であるという問題があります。造血幹細胞を増幅するために、生体内に存在しない化合物を用いて刺激を与える方法が従来提案されていますが、このような方法による刺激は、生体内において対応できない刺激となり、造血幹細胞の巧妙な制御機構を乱すことが考えられ、癌化等の危険性も危惧されています。
本発明は、一般に知られる培地に対して、追加培地、添加剤、培養基材等の形態で提供される少なくとも1種類のHDGF(Hepatoma-Derived Growth Factor)物質と共に造血幹細胞を培養することにより、造血幹細胞を増幅させることを特徴とします。HDGF物質には、HDGFペプチド自体、及びその修飾体等が含まれます。また、ステムセルファクター、flk-2/flt-3 リガンド、トロンボポエチン(TPO)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子及びIL-6からなる群から選択される少なくとも一つのサイトカインを更に含有することでより造血幹細胞の増幅率を向上させることが可能です。このようにHDGF物質を主成分とし、必要に応じてサイトカインを 更に添加した培地等を、造血幹細胞増幅誘導剤として提供することで、研究及び医療の場において、容易に造血幹細胞を増幅することが可能となります。
増幅操作においては、管理された環境下で、無菌的且つ不純物が少ない品質で作製したHDGF物質を使用することが出来るため、移植における安全性が高いというメリットも有します。造血幹細胞を増幅させることで、造血前駆細胞や特定の血液細胞、例えば赤血球や血小板等の血液細胞を大量に生産することも可能となります。体外で造血幹細胞数を増やせることから、患者自身の骨髄や末梢血などから少量の造血幹細胞を採取することで自家移植が出来るようになります。また、ドナーの骨髄から少量の造血幹細胞を採取することで移植ができるようになり、ドナーのリスクが減少するという更なるメリットも有します。
開発段階 | ・モデルマウスを用いたin vitro実験により効果確認 |
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